旦那との出会いを小説風にしてみた②
前のお話はこちら
※2002年ころの大阪のお話です。
「城天で路上ライブしてるから、見に来て」
ライブハウスで偶然見つけたバンドマンに教えられた「城天」
毎週日曜に大阪城ホールから大阪城公園駅の一本道で様々なバンドが路上ライブをしているのを「城天」というらしいです。
インターネットの普及はまだ過渡期。
メジャーアーティストにはHPはあれど、インディーズバンドにHPなんてありませんでした。
SNSなんてものもありません。
21世紀になったのに、情報は足で探すまだまだアナログな時代。
ただ、その初めて見て感動したバンドマンに言われた「城天に来て」という言葉だけを頼りに、何時からライブが始まるなんかそんなのもわからず、
ただただ女子高生は、自分の世界を広げたいがために「城天」に足を踏み入れるのでした。
運命の日曜日。夕方から別の用事もあったので、女子高生はお手製のロリィタみたいなお洋服に身を包んで気合を入れて行きました。
「城天」は見たこともない風景でした。
何もない広い一本道にずらっと等間隔に並ぶバンドセット。
たくさんの音楽をやってそうな今どきおしゃれなお兄さんたちと(お姉さんもたまにはいたかもしれない)
それを見て楽しそうにしている同年代くらいの女の子たちの集団。
自分もライブにはよく行くから、ライブ前に同じファンの女の子たちとわいわいはいつもしているけど、こんな路上にドラムやアンプやスピーカーが並んで、しかもその出演者が目の前をウロウロしてるなんて、今までにはありえない光景でした。
思った以上にたくさんのバンドブースが路上に並んでいてましたが
お目当てのバンドマンは「城天」の創始者つんく♂さんがつくったバンドブース「すっぽんファミリー」の一員だったので、そのブースは一番前のわかりやすい位置にありました。
無事に見れそうでよかった!とは思いましたが、しかし、そこは「バンド好きロック少女」たちの集まる場所。
ビジュアル系が好きな「バンギャ」とこういった路上のロックバンドが好きな女の子たちは同じ「バンド大好きなギャル」といっても全然違います。
「ロック少女」の制服はアメカジでした。
そう、うっかりロリィタもどきで来てしまった女子高生はまったく浮いていたのでした・・・。
周りから白い目で見られつつもライブを観戦し、完全に浮いた状態で
「歓迎はされなかったけど、音楽聞けてよかったな」の感想で女子高生が帰ろうとしたときでした。
「なんで、こんなところにいるの!?」
声をかけられて振り返った先には、いつも行っているT.M.Revolutionのライブで一緒になる女の子二人組でした。
「めっちゃ目立つ格好の子がいると思ったら!知ってる顔でびっくりしたよ~~!!」
ロリィタもどきで浮いていて目立ったためか、こんなに人がたくさんいる場所で偶然にも知り合いと遭遇したのでした。
話を聞いてみると、その子たちは路上ライブのバンドマンに推しがいるらしく、
毎週城天に通っているとのことでした。
「もう、お目当てのバンド終わった??それなら、うちらの好きなバンドこれからだから見ていってよ!」
そういわれて腕を引っ張られ、女子高生はその友人たちの好きなバンドブースに移動しました。
そこには他のそのバンドのファンの女の子たち。
「なになに?誰~?」
「なんでそんなカッコしてるの~?」
「T.M.Rのライブの時はみんなそんなカッコしてるの~?」
ここでも奇異には見られたけど逆にいじって受け入れてもらえました。
そして始まったライブは、重すぎないJ-POP寄りのロック。
バンド編成は、ボーカル、ツインギター、ベース、ドラム、キーボードという7人体制。
女子高生にとって、めっちゃ好み!ではなかったけど、振り付けも教えてもらって楽しいライブの時間でした。
「どう?いい曲ばっかりだったでしょ?」
「みんなイケメンでしょ?誰が一番かっこいい??」
ライブが終わってファンの女の子たちに囲まれて質問攻めにされる女子高生。
まだまだファンの少ないインディーズバンド。ファンを増やすのに
ファンの女の子たちも必死なのです。
めっちゃ好みなバンドマンはいなかった。でも「みんな」と応援するのが楽しかった。
こんな感じの「好き」もいいかもしれない。
また、この女の子たちと会いたい。話したい。遊びたい。仲良くなりたい。
「あんた面白いし、このバンド気に入ったなら、また来週も来てよ♪」
来週も行ってみよう。
この「城天」という世界はものすごく面白い。楽しい。
大きな世界が一つ、広がった・・・。
運命の出会いまで・・・あと1週間。
※私がたまたまこの日、ロリィタを着ており、ロリィタファッションを好むファンの方も2002年当時多かったですが、T.M.Revolutionさんはビジュアル系ではありません。